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『妻の超然』



2016年、11冊目です。

絲山秋子の小説です。
彼女の作品は、過去「沖でまつ」「逃亡くそたわけ」などを読みました。
我々のそぐそばにある日常を舞台に、僅かに周りの人との間にある齟齬が、
歩む道筋に大きな影響を与えていく。でもそこでたどり着いた先は、
渇して無意味なものでなく、少し心が軽くなる着地点にたどり着きます。

「妻の超然」「下戸の超然」「作家の超然」の3つの小編から成っています。
「妻の超然」では、50歳前後の子供のない夫婦で、夫が若い女と浮気を
している。妻は気付いていて、夫との関係を”超然”と捉えて知らないふりをしている。
しかし、最後に、超然といって相手の考えていることを考えることをせず、
同じ時間を生きようとしない自分の生き方は、”超然”ではなく、”怠慢”なのではと気づく。
確かに、超然や諦観は、ある種の無関心から成り立っている精神状態だと思う。
”超然”という言葉の解釈やその役割は多様だが、思惟するにはいいきっかけだ。

「下戸の超然」は、お酒を飲めな男性の生き方を、恋人との出会いと別れの流れの中で描いている。
私自身も”下戸”であるため、作中の主人公の心境には、共感できるところも多い。
会社生活で苦労した点も類似している。私の場合は、加齢による病気もいくつかあり、
多種類の処方薬を服用するようになったので、飲み会の席でも、
”酒飲んだら死んでしまう”といって、お酒に口をつけなくて済むようになりました。
主人公は、下戸であるが、彼女が酒を飲むことには全く抵抗がない。
それを非難することもしない。彼女は積極的なボランティア活動をしており、
下戸の彼を引きだそうとするが、彼自身は、そういったことに感心も無く、彼女に合わせようとも思わない。
この辺りが下戸の超然立つところなのだろが、
「恵まれない子どもたちに幸せなバケーションをプレゼントする」という彼女の参加する
ボランティアの目的には文句のつけようがない。
けれども「疑いようのないこと」というものに僕はなにかうつろなものを感じてしまうのだ。
これが、主人公の下戸である彼の超然なのだと感じた。

最後の「作家の超然」は、主人公である作家が、首の腫瘍を摘出する手術の前後で考える
人間関係や社会と自分との関係性を描いている。
ちょうど私も手術直前に読んだので、なにか他人事のような気がしませんでした。
こんな一説がある「今は、病気がおまえを生かしている」。
まさに、自分でなく、これからは”病気が自分というものよりも優先されるものになっていくんだ。
まさに超然かもしれないですね。

おわり

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『逃亡くそたわけ』

逃亡くそたわけ (講談社文庫)逃亡くそたわけ (講談社文庫)
(2007/08/11)
絲山 秋子

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「わたし」と「なごやん」の2人が、入院していた精神病院を脱走し、九州を北から南に逃亡するという話です。

躁症状がひどく幻覚と幻聴に悩まされながらも、彼氏とそれなりに付き合っていた「わたし」は、
このまま夏がおまってしまうどうしようという軽い気持ちから自殺未遂をしてしまい、
病院に入院させられてしまう。彼氏から「精神病ってしらんかった」「好かん」と言われてしまいます。
「わたし」は、「精神病の人は、人を好きになったらいかんの?」と叫びます。

そこから、「わたし」の逃亡が始まります。
同じ病院に入っていた、抑うつ状態の「なごやん」を誘い、病院から脱走します。
二人は、連れ戻されることなく、鹿児島桜島まで行き着きます。

テトロピン レスリン デパス、眠剤など聞いたことのある薬の名前が出てきて、
他人事とは思えません。
いろんなことを考えながら、二人は逃げていきますが、
最後に、行き止まりになるという感じがします。
病んでいる彼らが、救われることはないし、
自らの生き方に光を見出すわけでもないと思います。

精神を病んでいても、「心」はあるということだと思います。
「悲しい」「寂しい」「怒る」「素直」「かわいそう」「好き」「誰かといたい」
・・・・
それでも、行き止まりになるのは、虚しいかな。


なごやんの車が「マツダ」の「ルーチェ」と言うのが、レアな感じがしました。

おわり



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『沖で待つ』

沖で待つ (文春文庫)沖で待つ (文春文庫)
(2009/02)
絲山 秋子

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「沖で待つ」は2006年の芥川賞作品です。
主人公の女性と同期の太っちゃんの男女の関係が全くない”友情”が描かれています。
先に死んだ方のパソコンのハードディスクを破壊するという妙な約束をするのですが、、、。

香山リカの「若者のホンネ」という本の中で、
これだけ濃い関係になりながら、恋愛に発展しない男女の関係っていうのが、
平成の若者の実態なのかと書いています。

私は昭和生まれですが、そういった人間からすると
最近にの若者の男女の壁を感じさせない付き合い方の感覚にビックリすることがあります。

互いの性差に惹かれていく感情を、”心の動き”から取り外して、
関係を濃くする(この物語の場合は、友情ですが)ことが出来る若者が多くなってる
ということなのでしょうね。世相や学校教育の影響が基盤にはあると思いますが。

それにしてもパソコンHDを破壊することは、私も誰かに頼んでおかなくては、、、。
この物語に出てくる”太っちゃん”のHDよりもかなりまずいものが入っているしなあ。

この物語のなかで、パソコンHDは、破壊する必要があるとは思えない内容でした。
妻への愛の気持ちを綴った”詩”です。
私なら、自分が死んだら読んでもらってもいいと思いますが、、、。

考えてみれば見るほど、奇妙な男女の友情(人間)関係です。

おわり

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トホトホWALKER

Author:トホトホWALKER
性別 男性(家族有)

職業 サラリーマン
居住地 西日本の地方都市

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