FC2ブログ

『ブラフマンの埋葬』




奇妙な動物「ブラフマン」と私の生活ぶりが描かれている作品です。
例によって、その舞台がどこなのか?日本?フランス?書かれていません。
また、登場人物にも名前がありません。
僕は”創作者の家”の管理人、碑文彫刻家、雑貨店の娘、ホルン奏者、、、、。
これらが透明感のある作品を演出しています。
解説を読むと、この作品は、著者がフランスにイベントで招かれた時に、発想を得たとのこと、
古代墓地、石棺などは南フランス地方を念頭に書かれているようです。
でも、少々外れていると思いますが、私は、この作品の舞台が、岡山県の倉敷市の南端、
鷲羽山当たりの風景に思えてなりません。
作品中の古代墓地の描写や川に棺が流されてくる描写が、自分が幼児の頃に、
家族といった鷲羽山のごつごつした砂の斜面やそこから見えた海の印象と重なったような気がします。
私はフランスに行ったことがありませんから、自分の経験値の中から作品の舞台を想像したので、
実体験の記憶と結びついたのだと思います。
著者が全く意図しない作品の舞台を読者が想像するのは、
やはり著者の意図なのかもしれないなと思います。

おわり

2016年、43冊目です。

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

『いつも彼らはどこかに』


2016年、31冊目です。

動物と人間のふれあいみたいなことがモチーフかと思って読み始めました。
それは、心地よく見事に裏切られました。まさに小川ワールドという感じです。
ストーリーや文体そのものに、大きな感動や心を揺さぶるメッセージがあるわけではないのですが、
自分の心の中にある様々な考えというか既存の感情の隙間に、じわっとしみ込んでくる感覚がします。
これは、私の小川洋子作品に対して共通して抱くイメージです。
この小説は、何かしらの生物が出て来る8つの短編が収められています。
「帯同馬」/「ビーバーの小枝」/「ハモニカ兎」/「目隠しされた小鷺」/
「愛犬ベネディクト」/「チーター準備中」/「断食蝸牛」「竜の子幼稚園」です。

「目隠しされた小鷺」に出てくる移動修理店の老人が、1枚の絵を見るために、小さな美術館にやってきます。
そこで働く「私」は、老人がその絵を見るために行っている奇妙な行動を手助けすることになります。
この老人の行為にすごい重たい背景があるのか?と思わせながら話は、「私」とその老人の関わりで進みます。
”小鷺”が出てくるのは、最後の一瞬です。まさに、いつも彼らはどこかにという感じですね。

「帯同馬」というのは、海外の大きな競馬レースにでる本命サラブレッドの精神的安定をはかるために、
一緒に移動遠征する時に”帯同”するレースに出ない馬のことです。
この物語だけが、関東の競馬場であることが分かります。
ちなみに他の作品は、まったく場所が分かりません。そもそも日本なのかさえも特定できないです。
そういった物語の設定の場所を無機質で、白っぽい感じにすることで、
登場する人間の行動に機微を感じやすくしているだろうかと思います。

「愛犬ベネディクト」は、もうちょっとのところでサイコパス的世界に入ってしまいそうな感覚をうけました。
愛犬とは犬の置物なのですが、それに対する家族の思い入れ方というか、
存在の受容性が、滑稽に思える反面、恐ろし世界を描いているという感覚を待たせます。(2016/11/19)

その他の小編については、また思い出せたときに、加筆します。

おわり

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

『原稿零枚日記』



2015年の41冊目です。
主人公である”作家”の私の奇妙な日常を、日記風に書き綴っています。
小川洋子作品に欠かせないな「奇妙な職業」を持つ人を始めとし、「奇妙な料理」、「奇妙なツアー」が出てきます。
日常の中に描かれている非日常的かつ不思議な世界が、現実から読み手の意識を引き離していきます。
引き離された意識が自分なのか?置き去りにした無意識が自分なのか?
奇妙な世界から、「あなたは何者?」と問われている気持ちになる。
苔料理店、ツアー参加者が次々に迷子になりながらも時間通りに進んでいく現代アートの祭典見学ツアー、
物語の”あらすじ”を語るあらすじ係という職業、楽譜めくり係、、、。
この奇妙な世界に入り込むと、自分の日常の平凡さが、実は、本当の姿ではないのでは?と思ってしまいます。

おわり

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

『偶然の祝福』



2015年の17冊目です。

7つの短編から成る連作小説です。
「失踪者たちの王国」から始まり「蘇生」というお話で終わります。
特別SFぽい物語の設定ではないものの、奇妙な人の奇妙な行動が、非日常的な世界観を、
今生きている世界に植え付けてる感じがします。
この”奇妙さ”が、小川洋子の特徴であり、私を惹きつける特徴でもあると思います。
”奇妙な事”を通して、自分の存在を認識できるということかな?
犬が罹る涙腺水晶結石症という奇妙な病気のお話は、主人公の孤独感を強く感じるものでした。

おわり

『人質の朗読会』 (中公文庫)

人質の朗読会 (中公文庫)人質の朗読会 (中公文庫)
(2014/02/22)
小川 洋子

商品詳細を見る

2014年の61冊目です。
九つの物語が収められている短編集です。設定は、日本からの旅行会社のツアー参加者が、地球の反対側にある国の山岳地帯で反政府ゲリラの人質になってしまう。捉えられた八人の人質と救出作戦に携わった政府軍兵士の物語です。長い人質生活の中で、彼らは自分の人生における”忘れられない”過去を一つずつ物語にして語ることにしたのです。話の内容は”小川洋子”ワールド全開です。日常生活の中に流れている整然とした時間の刻みに、ちょっとだけ引っ掛かりを残してしなった”自分にとっての忘れられない過去”が誰の人生にもある。それを一つ一つの物語の中で表現しています。
アルファベットの形をしたビスケット工場で働く女性と大家さんとの交流を描いた「やまびこビスケット」。危機言語を救う友の会のような奇妙な会合が開かれる公民館の「B談話室」。出来損ないのぬいぐるみを路上に拡げ売っている老人と少年の交流を描いた「冬眠中のヤマネ」など、人の心に残り、その周りにある記憶が解け落ちても、確実に生き続ける”その出来事”が人の心の品性を定めていく気がしました。

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

トホトホWALKER

Author:トホトホWALKER
性別 男性(家族有)

職業 サラリーマン
居住地 西日本の地方都市

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター