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『短編工場』


2015年の33冊目です。

2000年代に「小説すばる」に掲載された短編作品から選ばれた12編が収められています。
名前は良く知っている何人かの作家の作品を、この短篇集で初めて読みました。
道雄秀介、奥田英朗、桜庭一樹、宮部みゆき、乙一、村山由佳といった作家の作品を初めて読みました。
どの短編もストーリーに引きこまれ、まったく退屈することがありませんでした。

印象に残った作品
・「じごくゆきっ」桜庭一樹
女子高校生が、副担任の中村由美子先生の逃避行に泣きこまれ、夜汽車で鳥取まで揺られていく物語です。
逃避行の間、中村由美子先生の子供じみた現実逃避の心情を他人事のように受け入れていく”どうにもならない”
心情の描写が、他人事のように思えない。

・「陽だまりの詩」乙一
人間がいなくなったと思われる世界に、人間が造った”人間の機能を持った”人間のような者が、
自分を造った”人”と”自分”の死に直面することで、感情という機微なものにそっと触れていく様が切なく描かれています。

・「金鵄のもとに」浅田次郎
浅田作品はたくさん読んでいます。
私が知っている作家で、戦争、戦後の混沌を小説にできるのは彼しかいません。
戦後間もない街角で、南方戦線から復員してきた主人公が、傷痍軍人として物乞いをしている男を見咎めます。
彼の経歴に自分が所属していて玉砕した部隊の名前が使われていた。
私が想像もできない混沌とした戦後の時間を生きていた人々。
彼らの矛盾にも似た残忍でやりようのない感情描写がなされています。
それが、安穏な日々を送る自分をひと時、内観へと導きます。

おわり

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

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トホトホWALKER

Author:トホトホWALKER
性別 男性(家族有)

職業 サラリーマン
居住地 西日本の地方都市

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