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『おまえじゃなきゃだめなんだ 』



2015年14冊目です。
タイトル、装丁からして、50歳過ぎのオジサンが手に取る本ではないが、
角田光代さんが好きな事と時には少しばかりの恋心模様に触れることで、
自分の心のデドックスをしたいと思って読みました。
ショートストーリ集です。
単に男女の恋愛心模様だけを描いた作品だけでもありません。
当然、ストーリーの主人公はすべて女性ですが共通しているのは、
「その時の自分」を「今の自分」が、冷静に見つめている感覚です。
一見、”冷めている”とも感じますが、
次第に、これは年月を経て紡ぎあげられた物語=人生だと思えてきます。

おわり

幸福な遊戯 (角川文庫)

幸福な遊戯 (角川文庫)幸福な遊戯 (角川文庫)
(2003/11)
角田 光代

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2014年の67冊目です。
3つの短編が収められています。
1つ目の「幸福な遊戯」は、女子大学生の主人公が、男性2人と、家賃の倹約の為シェアハウス生活を始めます。
そこでのルールは「同居人同士の不純異性交遊」禁止です。自分自身の家族から得られなかった”居心地の良さ”を、
3人の生活の中に見出した主人公。でも、自分より”生きる目的”を未だに見出していないと思っていた彼らが、
追い求めることを見つけて家を出ていきます。取り残された寂しさや焦燥感にさいなまれながら、
前に進むことができない若い女性の心情が描かれています。
私の年齢では考えられない「不純異性交遊禁止」付の男女一緒のシェアハウス。
でも、そこにしか、自分の居場所を見つけられなかったという設定が、主人公に対する不憫さを強くします。
突き詰めると家族の情の薄さが、奇妙な生活を作り出しているような気がします。
3人の間に、全く恋愛感情が発生しないのも少々奇妙の感じがしますが、この「不純異性交遊」禁止は、
守られることはありませんでした。

2つめの短編は、「無愁天使」です。
これも、母親との支配的関係がその死によって崩壊した後の、私の刹那的な生き方が描かれています。
たくさんあった母の保険金を憑かれたように物を買いまくり使い果たし、お金の為に風俗係の仕事をするに至ります。
そこには、淡々とした心のうつろいのみがあり、後悔や後ろめたさは見られません。
彼女の初老の客が、”死”をイメージして眠るという奇妙な癖を持っています。
今生きていたこの時間を、眠りにつくたび、洗い流し人生をリセットするかのように。
何度も死に生まれ変わる儀式を繰り返すのだが、決して彼女がそれで救われることはないように思える。
満たされないことは、出口のないことのようにさえ感じる。

3つめの短編は、「銭湯」です。
主人公の彼女は、就職した今もアパートにお風呂が無く、銭湯に通います。
そこに、丹念に丹念に体を洗い磨く普通の容姿で普通のスタイルの女性客を見つけます。
主人公は、都会で学校を卒業した後も、好きな演劇を続けていると母親に偽りの手紙を書きます。
実際の彼女は演劇を諦め小さな食品会社で目的もなく、働いています。
それは、母に書いた偽りの自分を確かなものに変えるためのようにも感じられます。
でも、この手紙は一度も母に差し出されることはありませんでした。
どちらの人生にも意味のないことに気がつくきっかけが、銭湯の中の些細な出来事からやってきます。
人が自分の人生に、これでいいんだと気付くのにドラマはいらず、日々繰り返される些末な出来事だと思います。

おわり

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『かなたの子』

かなたの子 (文春文庫)かなたの子 (文春文庫)
(2013/11/08)
角田 光代

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2014年の24冊目です。
第40回(2012年)泉鏡花賞受賞作です。
泉鏡花の作品など読んだことはありません。学校の歴史で名前だけ知っているのと、
幻想的で、怪奇的な作風の文学だったということだけです。
選考対象は、泉鏡花の文学世界に通ずるロマンの薫り高い作品となっていることから、
私が、今まで読んだ角田光代の作品とは、作風が違うのだろうと想像して読み始めました。
(空中庭園、なくしたものたちの国、Presents)

おみちゆき / 同窓会 / 闇の梯子 / 道理 / 前世 / わたしとわたしではない女 / かなたの子 / 巡るの8作品が
収められています。

ほとんどの作品に、因習という言葉が、ストーリーの底から響いてくるようです。
時代設定が現代だったり、明治~昭和初期だったりしたりします。

幻想的というよりは、怪奇的という言葉が浮かびます。
それが、この世に伝わる因習によって現わされているように感じます。
しかし、表現に猟奇的なところはなく、怨念、拘り、愛情、惜別、無関心、恐怖などが
混ざり合った末に出現する不条理な世界のように思えます。

表題作「かなたの子」は、命を宿しながらこの世に生まれてこれなかった我が子
に会えるという場所”くけど”に、鉄道に乗り、海を渡りたどり着きます。
そこで、子供達の笑い声が聞こえてきて、心は夢と現の世界の間を倒錯します。
この辺りが、泉鏡花賞を受賞しいる特徴だろうと思います。
この作品には、基になるお話があります。それは、ラフカディオ・ハーンが記した
「子供たちの死霊の岩屋で」という120年前の作品です。”くけど”という場所も
実際に存在し、”潜戸”と書き島根半島の日本海に面した岬にあるそうです。

今まで読んだ角田光代の作風と随分と異なり、話に入っていけるかな?と思っていましたが、
最期まで、しっかり読み切ることができて何よりでした。

おわり

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『なくしたものたちの国』

なくしたものたちの国 (集英社文庫)なくしたものたちの国 (集英社文庫)
(2013/08/21)
角田 光代

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2014年の21冊目です。

角田光代さんの本は、今までに「あなたに、大切な香りの記憶はありますか? 」と「空中庭園」の2冊しか読んだことがありませんが、この本は、それらとは全く違う印象を持ちました。簡単な言葉で表現すれば、不思議なファンタジックな感じです。主人公は8歳までは、トカゲや学校で飼っている山羊と話ができた。でも家で飼ってた猫のミケのしゃべっていることは分からなかった。そのミケの生まれ変わりという中学生と恋人になる。大人になった不倫の恋をしてしまい思いが強く過ぎて生霊になる、、、。といった感じで主人公が不思議な経験をしながら生きていく様を主軸にして、その時々に”なくしていくもの”に思いを抱く物語です。人生では”得たもの”と”失ったもの”は等しいのだろうか?少なくとも、私の年齢になると”なくしたもの”の方が、日々増えていることを実感します。

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『空中庭園』

空中庭園 (文春文庫)   空中庭園 (文春文庫)
   (2005/07/08)
   角田 光代

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表題作「空中庭園」について

郊外のダンチで暮らす京橋家のモットーは「何ごともつつみかくさず」だが、
実は、家族それぞれが秘密をもっていながら暮らしている。
主人公の自分の母親に対する反発があり、、、。

誰かの心が救われるわけでも再生の物語でもないと感じました。

自分は、母親のようにならない。理想の家庭を築こうとする主人公の絵里子。
夫や子供達との一見、あけすけな関係は目的を達してるかのように思える。
そう思いたいのは、絵里子の母親に対する反発や嫌悪からだと思う。

「そうなりたい」と思って得たものと、
「そうなりたくない」と思って得たものには大きな違いがあるんだと気付かされる内容です。

「空中庭園」を言い換えれば、”ガラス家族”とか”仮面家族”とか”掛け違った家族”とか、
そんな言葉になるのかなと思います。

”虚”という一字にイメージ化されようにも思います。

深夜になっても帰ってこない息子とそれへの家族の向き合い方が、
この家族の崩壊と新しい関係への序章となるかの予感がします。

おわり

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プロフィール

トホトホWALKER

Author:トホトホWALKER
性別 男性(家族有)

職業 サラリーマン
居住地 西日本の地方都市

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