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『図書館の神様』

図書館の神様 (ちくま文庫)  図書館の神様 (ちくま文庫)
  (2009/07/08)
  瀬尾 まいこ
  
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== 読了日 2011年1月21日 ==

【読んでほしい人】 自分の思い通りに人生が進まないと少し諦め気分の人。

自分の思い描いたものとは違う人生を始めた高校教師”早川清”。
彼女は赴任した高校の文芸部顧問になり、たった一人の部員”垣内君”と向き合うことになる。

彼女には、高校時代の部活で後輩を自殺に追いやったという過去があり、
そのせいで自分が描いた人生とは違う人生を歩み始めたばかりだった。

垣内君も中学時代のサッカー部で友人に怪我を負わせたことから、高校でたった一人の文芸部に在籍する。

お互いに過去の出来事に”現在”を縛られる生き方をする二人が出会う。

垣内君は、既に自分の心の置き場を確立できているように感じる。

一方”早川清”は、不倫をしたり、心の定まらないまま生きている。
ただ、人生を捨て鉢にしているわけではない。
垣内君は、清の中に残っているまっすぐで、生き生きとした気持ちの持ち主であることをすぐに理解した。
「きっと、先生のなかにはその昔の性分がいやってほど残っていますよ」と。

垣内君のどこか飄々とした言動に触れながら、
清は、少しずつ自分の中に潜在化している”らしさ”を取り戻していく。

人間の心が再生するのは、劇的な出来事や、運命的な何かとの出会いといったことを思い描きがちだが、
この物語は、もとゆっくりと再生が進んでいく。

どんな状況になっても、心の中に必ず”自分らしさの残り火”があると思う。
偶然の巡り合いが、互いに”らしさ”に向けて再生していく様は、
劇場的な部分がない分だけ、納得感を抱かせる展開でした。

心の中の”らしさの残り火”さえも消してしまうほど、自分を捨て去っていはいけないよ。
いつか、それが種火となって、心に温かい灯を燈すことができるから。
そんなメッセージを感じました。

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『天国はまだ遠く』

天国はまだ遠く (新潮文庫)  天国はまだ遠く (新潮文庫)
  (2006/10)
  瀬尾 まいこ

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=2011年8月25日読了=


自殺しようと、さびしい田舎町までやってきた若い女性(山田千鶴)が、
たまたま泊まった民宿の主人”田村さん”との生活の中で、自分を取り戻し再生していく物語です。
確か「図書館の神様」という小説も、同じようなモチーフでしたね。
瀬尾さんらしい、柔らかく優しい言葉で書かれている作品です。

主人公の女性が、再生を始める決定的な出来事があったわけではないと思います。
民宿の田村さんの大雑把な性格に触れていくことで、自分自身が、恐れ、嫌悪し、
悩んでいた人間関係などが、次第に小さいことに思えてきたのかもしれない。
言い換えると、自分と全く違う価値観を持つ人が、しっかり生きているのを見て、
自分の今までの価値観が、間違っているような気がしてきたんだと思います。
そう考え始めると、”自殺”するという自分の価値観も、
なんだか違うことの様な気がしてきたんだと思う。
「よし、これだ!」と何かを掴んだというよりは、
今までと違った価値観、今までと違う自分を見つけようとするきっかけを、
手に入れることができたんだと思います。


それにしても、民宿の”田村さん”は、いい味出してます。
主人公にCDを進めるシーンで、
「別にええやん。結局、あれやろ?ミスチルでもビートルズでも、
なんや世界平和が大事で、人は人を傷つけるけど、愛することは素晴らしい。
ってな感じのことを歌っとるんやろ」
「それ以外のことやったら、いちいち歌わんでもええやん。
どのみち世の中ラブアンドピースやったらええんやろ。
ラブアンドピース以外のことが聴きたかったら、吉幾三を聴けばええ。
それ以外のことは幾三がみんな歌ってくれとるから」
こんな大雑把さでぶつかってこられたら、イジイジしている自分の世界が、
なんか間違っているような気持になりますね。


主人公が決意した時も素敵でした。
「ここから抜け出すのにはパワーがいる。だけど、気づいたのなら行かなくてはいけない。
今行かないと、また決心が緩む。そして、私はやるべきことがないのを知りながら、
ここでただ生きるだけに時間を使うことになってしまう。
それは、心地いいけど、だめだ。温かい所にいてはだめだ。
私はまだ若い。この地で悟のはまだ早い。私は私の日常をちゃんと作っていかなくちゃいけない。
まだ、何かをしなくちゃいけない。もう休むのはおしまいだ。」
この心境に至るために、全ての出来事が準備されていたと実感しました。

でも、田村さんは、ええ味だしてるけど、
実は、初めから主人公の山田千鶴を再生させることを、
直感的に悟っていたのかなと思ったりします。
傷ついている人には、安っぽい「優しい」より、
ちょっと隙のありそうな、相手を追い詰めない大雑把な優しさの方が、いいのかも。

追記
手紙に書く言葉は、独りよがりじゃなくて、相手が読むことを考えて書くと、
相手が受け取った後も生きていく言葉になるというという意味の一節がありました。
そんな文章が書けるようになれば、いいなと思います。

それと、おいしいものを食べると、決心が鈍るというのも、納得の言葉です。

テーマ : 最近読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

tag : 瀬尾まいこ 天国 田村さん 吉幾三 図書館の神様

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Author:トホトホWALKER
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職業 サラリーマン
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