王国


ここ1年の間に、4,5冊の中村文則作品を読んだ。初めて読んだ作品が、「掏摸」でした。
今回読んだこの「王国」という作品は、その姉妹作という位置づけです。
主人公の女性がその心と生き様のすべてを支配されていく感覚で、物語が進んでいきます。
なぜ、ここ最近中村文則の作品を読んだのかな?
この数日間、何冊かの本を読みながらふと頭に浮かんだことは、
物語の最後は、救いや再生や癒しが必要なのか?という考えです。
ほとんどすべての書物(少なくとも書店で人の目に触れる場所の並んでいるもの)は、
救われる、感動、涙腺崩壊、癒し、再生の物語といった帯がついています。
「この物語には、なんの救いもありません、人間の再生など描かれていません」と書かれているものがないです。
多くの人に、再生と救済の物語がくっついた人生があるのでしょうか?
たぶんそんには、ないでしょう。
無いというか、あるのかないのかといった思考をすることもなく、
苦痛や病、老いの中にいる自分と向き合って、ただ生きているというのが多くの人の人生にも思える。
この中村文則の作品には、ほとんど再生する人や救済される対象が見当たりません。
描かれている情景は、かなり非現実的な世界ですが、
人はそう簡単に、再生したり癒されたり救われたりしないという視点での人間描写は、
肯定される面があると感じます。そこに、共感を感じる人が、彼の物語に惹かれるのではと感じました。

(2016年、47冊目)

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

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トホトホWALKER

Author:トホトホWALKER
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職業 サラリーマン
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